細波に

池のべに羽毛漂ふ蘆の角

水鳥が半分ほど帰って静かな池の面がかすかにゆれている。

まだ残っている鴨がひく水脈が細波となって水際まで寄せているのだ。
そこには紛れもなく芦の芽が水面から顔を出していた。細波に洗われていまにも沈みそうであるが、それにも耐えてしっかりとした芽だ。その尖った芽は角芽というのに相応しい。

水の底

隠沼の笹濁りして蘆の角
漣の間に角出て蘆の芽組かな

早春に、水辺にみられる蘆の芽を「蘆の角」と言う。

ツンと天を突くように伸びる芽が細いので「角」というわけだが、これは俳句独特の言い方である。
写真は蘆ではないが、たまたま訪れた公園の池で発見したものである。おそらく菖蒲の芽であろうと思われる。水の中でも浅いところは光が充分届くようで、水中に多くの芽吹きが見られる。
徐々に水が温むようになると成長のピッチも上がることだろう。