一ㇳ筆の右往左往の蜷の道
秒速のミリにとどかず蜷の道
その歩みおほどかなりし蜷の道
来し方のかばかり著し蜷の道
その先へまだ伸びてをり蜷の道
蜷の道殻のわずかに震へつつ
先頭のわずかに震へ蜷の道
踏み固めらるることなく蜷の道
幾山を越えるにあらず蜷の道
塗り替へてまた塗り替へて蜷の道
朝にはまた新らしき蜷の道
道の上にそのまた上に蜷の道
へしあひて消し合ひ勝り蜷の道
今月の吟行句会は西の京。
近鉄西の京駅で降りるとさっそく紅萩に迎えられ、右に薬師寺に向かうグループ、左へ唐招提寺グループとめいめい好きなロケーションを選ぶ。
薬師寺を訪れた回数に比べ圧倒的に少ない唐招提寺に向かうことにした。緑も深く涼しかろうという下心もあったのだが、目論見はみごとにあたり、国宝の青葉若葉の盧舎那仏、十一面の千手観音さまに手を合わせたのち三々五々境内に散る。
句材は至る所にあり、掲句の田螺もその一つ。同じ池にはカワニナも点々としているし泥鰌もくねる。はっきりとそれと分かる杜若もあれば、花菖蒲、黄菖蒲、。。。。鑑真御廟の前庭の苔の花、池には牛蛙が鳴き、和上の故郷・揚州から送られた名花「瓊花(けいか)」の青葉。一歩お堂に入れば薫風が駆け抜け涼しいこと限りなし。
例によって出来は今一歩。時間をかけて醸成できればよしとしよう。