鑑真の故郷の名花

一ㇳ筆の右往左往の蜷の道
秒速のミリにとどかず蜷の道
その歩みおほどかなりし蜷の道
来し方のかばかり著し蜷の道
その先へまだ伸びてをり蜷の道
蜷の道殻のわずかに震へつつ
先頭のわずかに震へ蜷の道
踏み固めらるることなく蜷の道
幾山を越えるにあらず蜷の道
塗り替へてまた塗り替へて蜷の道
朝にはまた新らしき蜷の道
道の上にそのまた上に蜷の道
へしあひて消し合ひ勝り蜷の道

今月の吟行句会は西の京。

近鉄西の京駅で降りるとさっそく紅萩に迎えられ、右に薬師寺に向かうグループ、左へ唐招提寺グループとめいめい好きなロケーションを選ぶ。
薬師寺を訪れた回数に比べ圧倒的に少ない唐招提寺に向かうことにした。緑も深く涼しかろうという下心もあったのだが、目論見はみごとにあたり、国宝の青葉若葉の盧舎那仏、十一面の千手観音さまに手を合わせたのち三々五々境内に散る。

句材は至る所にあり、掲句の田螺もその一つ。同じ池にはカワニナも点々としているし泥鰌もくねる。はっきりとそれと分かる杜若もあれば、花菖蒲、黄菖蒲、。。。。鑑真御廟の前庭の苔の花、池には牛蛙が鳴き、和上の故郷・揚州から送られた名花「瓊花(けいか)」の青葉。一歩お堂に入れば薫風が駆け抜け涼しいこと限りなし。

例によって出来は今一歩。時間をかけて醸成できればよしとしよう。

“鑑真の故郷の名花” への4件の返信

  1. 鑑真ゆかりの唐招提寺、良さそうなところですね。

    瓊花、初めて知りました。
    調べてみたらガクアジサイによく似た花ですね。
    この花も詠んでいただけると嬉しいです。

    1. 花期は既に終わっていましたので残念でした。
      鑑真廟の前には当時の首相・趙紫陽の揮毫による漢詩が彫られています。句に詠んだ瓊花は趙さんのお手植えだそうです。
      日中はまだ穏やかな時代だったようですね。

  2. 薬師寺の新緑に囲まれた池に咲いた菖蒲、池の住人である泥鰌、田螺、牛蛙の姿。
    静寂の中に蛙の声が響いている様子が目に浮かぶようです。
    句を読むには最高のロケーションですね。

    1. 薬師寺ではなく唐招提寺でした。
      天平の甍の主舞台です。
      この時期はどこでもそうですが、句材は豊富です。歳時記の掲載項目も2月頃に比べるとふんだんにあるので最高の季節ともいえます。
      逆に言うと、季語を駆使する力が試されているとも言えますね。

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