終生を近つ飛鳥の蝸牛かな
かたつむり王陵谷の外知らず
かたつむり近つ飛鳥のとき止まる
かたつむり近つ飛鳥のとき思ふ
素封家の屋敷鎖されてかたつむり
素封家の深閑としてかたつむり
素封家の木にて蝸牛の動かざる
木登りの何見るとなく蝸牛
老木にはりついたままかたつむり
悠久の匍匐前進かたつむり

大阪府立の近つ飛鳥博物館に行ってきた。
今月末まで「葛城氏と大和王権」の特別展があるということを知ったからだが、さらに今日は特別講演もあるということだったので楽しみにしていると行ってみて驚いた。
もともと駐車場がせまく100台程度とあったので行く前から多少不安があったのだが、何とあと1キロ以上もあるというのに道路が渋滞している。ここで車を降りて歩いて行けという。15分あまりだそうだ。ここらあたりは「一須賀古墳群」といって200基以上の古墳がある丘陵地帯で、普段はおそらく車の往来も少ない所だと思われるが、他府県から来たと思われる車も駐車していて、古代に関する関心の高さに今さら驚く。
おそらく、我々世代を中心とした知的関心を満足させようという層が大挙押しかけてきているのだろう。アキレス腱の炎症がようやく癒えかけたばかりなので、アップダウンの道は諦めて引き返すことにした。
そのまま帰宅するのも能がないと思えたので、竹内街道経由の道をたどった。二上山への大阪府側からの登山口があると聞いていたので、この目で見ておこうと考えたからだ。
登り道にさしかかって間もなく、二上の双峰が望めるところに道の駅「近つ飛鳥の里太子」があった。そして、付近の散策を始めるとすぐに竹内街道歴史博物館が見つかったのでここでしばらく時間を費やすことにした。

元に戻る形で足元の旧街道を降りて行くと、「梅鉢御陵」とも呼ばれる敏達、用明、推古、孝徳の天皇陵四基と聖徳太子廟を中心とした「磯長谷古墳群(しながだにこふんぐん)」が広がり、そこをぬけて北へ向ければ、四天王寺、難波宮への道となるという地理だ。
講演会では、仁徳天皇と葛城氏の関わりなど古代の聞きたい話はいっぱいあったのだが、この南河内を見渡す場所もまた古代を偲ぶ格好の場として、十分に関心が満たされたような気がした。