たわいなき話に血抜く院のどか
注射の上手なナースに当たった。
刺す瞬間も液体を注入するときも痛みというのはほとんど感じないのである。
おまけにこの人に打ってもらった注射痕に血がにじむということはかつて一度もないし、その痕跡すらよく分からないほど腕前が鮮やかなのである。
新米に当たるとどうか注射が上手であってくれと祈るような気持ちで体も固くなるし、だからなのか余計に針を刺す瞬間も注射液を入れる間も痛いのである。そういうときは決まって注射痕中心に血がにじんでだりする。
血圧さらさらの薬を常用しているので、一般の人よりは出血しやすいのである。
たわいもない話しをしながら打つのだが、この日はやけに混む理由が分かった。コロナが増えてきて発熱外来が忙しくなってきて先生が大忙しなんだと耳打ちしてくれた。
そんな話しが終わるか終わらないうち、それこそあっという間に0.5ccの増血剤が静脈の中に吸い込まれていった。