閻魔堂特別開扉

閻王や絵解の刀自の比丘尼めき

今月限りの特別開帳の閻魔堂では五分ほどの解説がついた。

お賽銭を投げる間もないほど、立て板に水のごとく老婆の解説が始まったかと思うとこれがなかなか終わらない。平板なトーンのせいか、中身にもなかなかついて行けずじまいのありさまで、とうとう後半はほとんどの話が空の上へ飛んで行く。
もう少しじっくりと閻魔さんを拝見したかったところ、早々と退散することにした。

かつてこの国には「絵解比丘尼」という尼僧がいて、熊野勧進のため地獄・極楽など六道の絵解きをしながら歌や物乞いをして諸国を歩いたそうである。これが、のちには遊女同然となり売色を業とするようになったとも。閻魔堂の絵解き刀自にはそのような妖艶な趣はなく、むしろ能面のように無表情だったが、長くこの閻魔堂をお守りしてきた年輪の趣だけははっきりと感じ取れるのであった。