罔象女神

みよしのの岩まで碧く水澄める
水神にすは雷神の来意かな

盆地と違って東吉野は涼しかった。

なにより、高見川に代表される川のそばの爽やかさには救われた。
とくに、今回初めて丹生川上神社(中社)まで足を伸ばしたことは大成功だった。
この神社は古代の離宮跡に創建されていて、近くには雄略天皇にまつわる伝説の名をもつ集落もあって、大変古い歴史をもつことに驚く。
祭神は「罔象女神(みづはのめのかみ)」で、いわゆる水神である。天武のときに社として起こしたのが始まりで水を扱う業者、電力会社、製氷会社、氷菓会社などの信徳が篤い。宮のすぐ前を水量豊富な丹生川が流れており、いかにも神域にふさわしい場所である。「丹生」とは水銀が産する場所を示すが、上社、下社もあって果たしてここがそうだったのかどうか、白州正子あるいは司馬遼太郎の著作でも読めば分かるかもしれない。

二句目は作ったような句だが、実際に神社を散策していると雷さまがとどろき、いまにも雨が降ってくるのではないかと思わせる雲行きになってきたのを詠んでみたもの。さいわい数回谷に響いただけでどこかへ行ってくれたのだが。