情けが徒か

髪切虫まだらに免じ赦しけり

髪切り虫を庭に見つけた。

人目には胡麻斑模様が美しく、長い触角を左右に振りかざしているので可愛いと思うかもしれないが、これが厄介な虫なのである。
名前の通り鋭い歯をもっているようで、固いものでもかみ砕く顎の力がすごい。樹木に産みつけられた卵から孵ると、木の中に穴を開けてあの成虫が現れる。それが梅雨時の今ごろなのである。
二三年前に珍しい楓を鉢に育てていたのが急に枯れてきたのもこいつの仕業と知った。
というのも、枯れる前にはおびただしい木屑(これが最初は何の粉なのか、まさか髪切虫がせっせと木の根元に穴を開けているとはつゆ知らなかったのだが)が木の根元に盛り上がっていて、たいして気にもとめずにいたらその翌年ぱたりと枯死したわけである。
産卵時期は秋だと言うから、その前に見つけ次第始末したらいいのだがどの木が気に入れられるか分からないし、もしかしたらどこかへ行くかもしれないと見逃すことにしたのだが。情けが徒とならないことを祈るばかりである。

春の命

髪切虫空中散歩しゃれこんで

髪切り虫の飛翔は独特である。

体を立てて、翅を左右に大きく広げたまま横移動するかのように移動して行く。
まるで空中散歩しているようでいて、あれでは子供たちの網に簡単に引っかかるにちがいない。
玄関先でときどき見かけるのであるが、虫と言えば蓑虫のこどもみたいな、1センチにも満たないものも壁などに帆を立てて動いている。あんな小さいうちから袋を隠れ蓑にしているのだろうか。
蟷螂も2センチほどに育ってきた。
春の命が着実に育ってきているのだ。