秘伝のたれ

鰻屋の垂れを練るとて人寄せず
一徹の鰻の垂れを練りにけり
相伝の鰻の垂れも三代目
鰻の暖簾垂れを守継ぎ三代目

たいそう繁盛しているのに支店を出さない鰻屋がある。

なんでも「垂れ」の調合は一子相伝の秘伝らしく長男にしか受け継がれないため、兄弟や姉妹がたくさんいても暖簾分けをしないのだと言う。
おかげで店は厨房、フロア、通信販売、会計それぞれ兄弟や親戚一同の力で支えられ、結束力も高そうだ。

ただ、ここ数年の「垂れ」はやや濃いように感じて仕方がない。最初は夏だから塩分を濃いめにしているのだろうと思ったが、その後も同様なのでもしかしたら代替わりによって微妙に変化しているとしたら心配だ。
それとも、減塩食に馴染んだ舌のせいで、外で食べるものを濃く感じてしまうだけなのかもしれない。