授かるということ

鶴翼の右より崩れ鴨の陣

月末は娘たちも来て慌ただしいので、俳句会への投函をいつもより早めに済ませた。

年賀状も余裕をもって、そして同窓生仲間との句会にも早くに投句したし、なにやら余裕の年の暮れである。これが仕事に追われる現役ならばこうはいかなかっただろう。
精神的にゆとりがあるせいか、大和川の鴨たちをしばらく観察していたらすっと掲句を授かった。自分で言うのも恥ずかしいが、今年のベスト・トゥウェンティをまとめた後だが、実はこれが俳句を作り始めてナンバーワンの出来ではないかと思うのだ。主観の混じらない、ただ見つめるだけで授かったと初めて感じることができた句であり、「客観写生」とはこういうことかとさえ思える「降りてきた」句なのである。
人からみると単なる類句、月次の句だと笑われるかもしれないが、自分としては短詩系のポイントである「驚き」「発見」を具現化しえたものだと信じたい。これからも自然体で対象に向かうことができるように鍛錬せねばと思うのである。

今年はいつもより小ガモが多く飛来していて、方陣とも円陣ともつかずに群れていた。一方で、やや大きいヒドリガモが拾い川幅いっぱいにV字を浅くした形で、まさに鶴翼然とした堂々とした陣を上流に向かって進んでいるかと見ているうちに、みるみる右端の鴨たちが川の中央へせり出してきてあっという間に崩れてしまったのだった。