授かるということ

鶴翼の右より崩れ鴨の陣

月末は娘たちも来て慌ただしいので、俳句会への投函をいつもより早めに済ませた。

年賀状も余裕をもって、そして同窓生仲間との句会にも早くに投句したし、なにやら余裕の年の暮れである。これが仕事に追われる現役ならばこうはいかなかっただろう。
精神的にゆとりがあるせいか、大和川の鴨たちをしばらく観察していたらすっと掲句を授かった。自分で言うのも恥ずかしいが、今年のベスト・トゥウェンティをまとめた後だが、実はこれが俳句を作り始めてナンバーワンの出来ではないかと思うのだ。主観の混じらない、ただ見つめるだけで授かったと初めて感じることができた句であり、「客観写生」とはこういうことかとさえ思える「降りてきた」句なのである。
人からみると単なる類句、月次の句だと笑われるかもしれないが、自分としては短詩系のポイントである「驚き」「発見」を具現化しえたものだと信じたい。これからも自然体で対象に向かうことができるように鍛錬せねばと思うのである。

今年はいつもより小ガモが多く飛来していて、方陣とも円陣ともつかずに群れていた。一方で、やや大きいヒドリガモが拾い川幅いっぱいにV字を浅くした形で、まさに鶴翼然とした堂々とした陣を上流に向かって進んでいるかと見ているうちに、みるみる右端の鴨たちが川の中央へせり出してきてあっという間に崩れてしまったのだった。

“授かるということ” への8件の返信

  1. 鶴翼の陣、初めて聞く言葉、調べてみてなるほど・・・
    よくご存じですね~

    数え上げればやり残したことはいっぱいあるけれど何となく私も余裕の年末です。
    お年玉の準備をしてすべて完了。
    客もないし静かで穏やかな年末年始になりそうです。
    明日見残した映画を見てきます。
    余裕・・・いいですね~

  2. 授かりましたか。自信と余裕、素晴らしい!私も見習いたいものですが悪戦苦闘です。。

  3. なかなか面白い句だね。
    このような句がさっと無心の境中から出てくるのはすばらしい。
    かつての騎馬と足軽を中心とした戦国時代の合戦の様子に見立てるとはね。
    ヒドリガモとコガモの様子が目に浮かびますね。
    平和な川の中で鳥同士の陣取り合戦でも見ているようで、ほほえましい感じがしないでもないですね。

    1. 「鴨の陣」という季語はあるんです。横一列に悠然として川上を目指し進んでいる姿が陣の鶴翼にみえ、それを観察していると「右翼が崩れる」という言葉を得たわけです。偶然の産物でもあるんですが、言葉が口を突いて出たのが幸いでした。

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