出て見よ

鷹の輪の点となりゆく国の原
地鴉をいなして鷹の舞ひにけり

それは住宅地の上に悠然と現れた。

大鷹のようである。
地上は風もなく素晴らしい秋日だが、上空の風をとらえてゆうゆうと輪を描いている。
地上が枯れてくると狩がしやすくなるのだろうか、鷹は冬の季語とされている。
真上の当たりに来たとき、地上から真っ直ぐ鷹に向かってまるでスクランブル機のように一羽の鴉がかかってゆく。
平原の王者は、煩いやつと関わるのを嫌うように大きく輪を描きながらもさらに高度を上げて平群の方へ向かって行き、やがてその点も溶けるように消えていった。
自宅周辺で大鷹を目撃するのはこれで二回目だが、これも郵便局への軽い散歩の褒美かなと思う。暑いときなどつい車でとなるところを、ちゃんと自分の足で踏ん張って立てばこの目、この耳、この鼻を使って四季の空気を思う存分吸うことができるのだから。

出直し

大鷹の翼返して耀へり

大鷹がはばたく姿を見たことがない。

発見したときはたいがい風をとらまえて旋回しているのである。
これが冬日ともなると、ひるがえるほんの一瞬下から日が当たるようなことがあり、きらめくように光を返すのでそれはそれは神々しい姿となる。
これこそ金鴟と呼ぶものではないかと思えるのである。
今日の鷹の句は全没。力が入りすぎたときは思いがまさってかえって句姿を崩してしまったようだ。
これを戒めとしてまた出直しだ。
なお、句会に出ると思わぬ知識も得るもので、「青鷹」と書いて「もろがえり」と読む。万葉集にも読まれる大鷹の古名で、鷹狩りに最も適していたとされる。

王者の飛翔

その目には風が見ゆるか鷹の舞

鷹がゆっくりゆっくりと輪を描きながら少しずつ上昇している。

大和川が大阪府に流れ込もうというあたりの南岸沿いは明神山と呼ばれる台地で、川に向かって急な斜面を形成している。
今日たまたま台地と川の間にあるホームセンターで、電柱にオオタカと思われる大型の鷹がとまっているのを発見した。やがて飛び去ると斜面に沿ってうまく上昇気流を捉えたのだろう、1分ほどかけて台地の上まで到達。
すると今度は台地の裏の方へ向けてすうーっと羽ばたくことなく滑るように視界から消えてしまった。
これが王者の飛翔なのだろう。