うす青く

雲晴れて麦の芽風にひかりけり

三輪山ふもとの麦畑がうっすら青んできた。

葉は鳥の羽根のように柔らか、しなやかで風によくなびいている。そこへ雲の間から光がもれると途端にキラキラと輝いて、同じく光がさして浮かび上がるような三輪山に呼応するようにも見える。
近寄ってのぞくと、土は意外に粗く機械撒きしたかのように曲がりくねった条が三輪山に向かって走っている。
あと二タ月もすれば立派な青麦畑となって、周りの田んぼがまだ黒々としているのと好対照な景色を見せてくれるだろう。

模様

三輪山へ麦の芽縦や横の列

三輪山のふもとに広がる麦畑。

かつて桜井市を中心として一大麦の産地であったあたりも、ごく狭い範囲に限られてきているようである。
三輪素麺の原料だって外からきたものに頼らざるをえない状況であるし、かつて麦粉で作られた餅がおりおりに食べられた風習もすっかり廃れた。この麦生産と同様に風前の灯火となったのが綿花栽培で、大和高田市でほそぼそと往時を偲ぶ活動が始められ、何とか大和綿花を残そうという動きもある。
月に一度の榛原の句会に向かうたび、三輪山の季節の移ろいを楽しんでいるが、麦秋のころの眺めにおおいに郷愁をさそわれる。先日通りかかったら、半年間ただの土色しか見せていなかった畑に麦がしっかりと芽吹いているのを見つけた。まだ出揃ったばかりで麦踏みにはいくらか間がありそうだが、それだけに芽の並びもはっきりとしていて、南北に並ぶ畑、東西に並ぶ畑が入り交じりになって美しい幾何学模様をなしている。
来月通りかかったらどれほど成長しているか。観察が楽しみとなってきた。