抹殺された民

しゃがまねば見えぬ蜘蛛塚露けしや
露けしや土蜘蛛塚の苔むして

葛城といえば、鴨氏、葛城氏の故郷。

古墳時代にはおおいに権勢をふるったが、その後歴史から完全に抹殺された民の故郷だ。
それ以前から土着していた「土蜘蛛」と蔑視された土着の民は、まつろわぬ民として東進勢力に徹底的に弾圧されたようで、後世悪霊として再登場させられるなど散々な扱いである。
この土地にまつわり、さまざまな伝説にいろどられた一言主神も、役行者も時の権力から抑圧され、結局は追放の憂き目にあっている。
敗者の常とはいえここまで悲惨な歴史を背負わせられた地域、地方というのは他にはないのではなかろうか。

滅びしものへの哀惜の情は断ちがたく何度も足を運ぶのであるが、今日は図らずも一言さんで偶然土蜘蛛の塚を発見することができた。ただ、案内表示がなければまったくそれとは分からない。というのは、塚全体が低く這った槙の枝に覆われており、しゃがみ込んで覗かなければ塚石の存在さえ気づけないくらいなのだから。

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