凍れる音楽

夕照に遊ぶ飛天や彼岸花

実は昨日唐招提寺の観月讃仏会の前に薬師寺に寄っていた。

この期間、解体修理中の東塔の相輪が一般公開されていたからだ。もうだいぶ傾いた日が差し込み、いくぶん黄みがかった空気に包まれた会場で、1300年もの長いあいだにしっとりした緑青がふいた水煙を目の当たりにした。笛を吹いて楽を奏でる天女がいれば、その上を縦横に舞う天女も透かし彫りされてそれはそれは美しい。写真でもよく見る有名な水煙だがほとんどがモノクロなので、実際に緑青を帯びたものを間近にすると「凍れる音楽」と賞された塔のシンボルにふさわしい、すばらしい作品だとあらためて思う。

すっかり白鳳の天女さんの虜になって、満ち足りた気分で彼岸花が咲く道を唐招提寺に向かった。

“凍れる音楽” への2件の返信

  1. 「水煙」 何だろうと思い検索してみました。

    なるほど「61年ぶりに地上に舞い降りた飛天 」と説明がありました。
    美術の教科書で目にしたことがあります。
    これを間近に見ることができたのですね。それは感激でしょう。
    めったの見られないものを鑑賞できるのもやはり奈良に住んでこその特権ですね。

    これからもいろんなものを紹介してください

    1. 薬師寺は薬師如来さん、日光・月光菩薩さんで有名ですが、東塔も白鳳木造建築物としてよく知られています。とりわけ私が好きなのは「相輪」です。これは日本中のどこの相輪よりも一段も二段も素晴らしいものではないかと思うのです。
      ですから、薬師寺にくると真っ先に目をとめるのは相輪です。西塔のはまだ昭和に再建されて間もないので金ぴかで、これはこれで大変美しい姿です。
      これらの相輪は遠くからでもよく目立ち、建物とのバランスもたいへんよく考えられていると思うのです。
      今から30年ほど昔に西の京を訪れたとき以来薬師寺は私の心を捉えて放しません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください