春を呼ぶ行事

お水取り紙衣は裂けも煤けもし(おみずとりかみこはさけもすすけもし)

東大寺お松明

お水取りというが、実際のお水取りは最終日だけで、それ以外では火を用いることの方が多いらしい。

回廊をお松明をぐるぐる廻しながら堂童子が走る絵が有名だが、実は、大団円を迎える3月12日からの行では達陀の行法(だったんのぎょうほう)という、礼堂の中でお松明を使うもっとも秘儀めいた行が行われる。この行では礼堂の内部で大きなお松明を床に突き刺すような仕草で火の粉が飛び散り、それを堂童子らが箒ようのもので叩きもみ消す動作が繰り返される。よくも火事にならないものだとほとほと感心するほどの火の勢いなのである。
以上は、この期間国立博物館で展示されている東大寺修二会のビデオから得たものであるが、回廊の外でみられるお松明だって、たかだかと軒に揚げてみせる所作の折には延焼するんではないかと十分にハラハラさせられるのである。こんなときお松明が崩れて落ちるなどすれば観客席からどっとどよめきがあがる。

堂の中で行われている行の様子は外からはちっとも分からないのであるが、ときおり聞こえてくる堂の床を打つ音、これは「差懸(さしかけ)」という練行衆独特の下駄の音であり、五体投地の音なのであろうが、想像の域を出ない、一般人にとっては、お松明が回廊を走る光景が春を呼ぶ待ちに待った行事であるというだけで十分意味があるのである。

“春を呼ぶ行事” への4件の返信

  1. お水取り、今の時期なんですね。メーンイベントに招待されて間近に見た人によるとそれはもう厳かで息をのむばかりだったそうです。映像で見るだけで迫力ありますもんね。仏教の権威づけには欠かせない大行事だったのでしょう。

    1. 実際の行法は戸帳と呼ばれる帷の中で行われるので、練行衆が火の影でうごめく様子や、練行衆の差懸や五体投地の音だけを便りに想像するしかないわけですが、それでも十分に神秘的な行法を感じ取ることができるのだと思います。
      東大寺修二会とは十二面観音さんに悔い改め、その功徳でもって天下国家安泰や仏教興隆を祈る行。部外者にとってはその程度の理解で十分じゃないでしょうか。8世紀から休むことなく連綿と続けられてきた行の凄みというのは、だてではないですね。
      一般の見学者たる私には時折聞こえる「音」とお松明の「火」でもって「二月堂の行」を理解したつもりになりました。

  2. お水取りは最終日だけなのですか?

    闇の中で燃えるお松明の炎は勇壮かつ神聖な行事なのでしょうね。
    東大寺二月堂修二会の仏前に400個の椿の造花が供えられるとか・・・
    この造花は京都「染司よしおか工房」で紅花や梔子で染められた和紙で作られるそうです。

    1. 間違いでした。閼伽屋と呼ばれる小屋で水をくむのは12日、昨日でした。12日からは松明が11本に増え、しかもそれが同時に回廊に上りますので圧巻だとおもいます。私は混雑を避けて11日に行きましたが。一人で行くなら12日以降なんでしょうね。

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