水を逃がす

閘門の水の引く間の春寒し

「隅田川」と言えばやはり桜だろう。

これを水上から眺めたらどんな風に見えるだろうか。
昔から有力な交通手段として水上バスが利用されてきたが、最近では観光が目的の水上バス、いわゆる運河クルージングが人気と聞く。
納涼船は古くからあるが、いまでは四季・昼夜を問わずお台場を巡るツアー、スカイツリーを巡るツアー、隅田川にかかる橋を巡るコース、などなどいろいろあるようだ。

この運河クルージングで一度体験してみたいものに「閘門」がある。これは、言わばパナマ運河のようなもので、交差する川の高低差を調節するものである。東京では「扇橋水門」が有名である。なんでも、高度成長時代の地下水汲み上げによって、地盤沈下が著しい江東デルタ地帯の洪水を防ぐため、川を掘り下げたので、隅田川や荒川と行き交う船の便宜をはかる必要が生じ、水位調節するゲートを設けたのだそうだ。

大阪にも「毛間閘門」と呼ばれるものがある。これは明治後期に完成したもので大先輩。こちらは、淀川の水を逃がして市内の洪水を防ぐのが目的のもの。何年か前の吟行コースにもなったところ。
東西奇しくも昔から水運によって発展した歴史をもつが、それは取りも直さず氾濫・洪水に立ち向かう必要に迫られ、知恵の限りを尽くした戦いの歴史でもあったろう。

花の時期にはまだ遠く、隅田川の風はまだまだ寒いことだろう。

“水を逃がす” への2件の返信

  1. ここ名古屋、中川区に「松重閘門」がある。
    堀川と中川運河とを結び、近代期の名古屋の産業発展を水運面で支えていた遺構であるが1968年に閉鎖され、現在は閘門としては使用されていない。
    やはり扇橋閘門同様、堀川と中川運河の水位調整が目的だったようである。
    昨秋この松重閘門界隈を区のボランティアさんに案内していただき5キロほどウオーキングをした。
    この閘門の運用開始時の大正期は「東洋のパナマ運河」として名古屋名物の1つとなったらしい。
    尖塔を含めてなかなか絵になる風景で写真愛好家がよく訪れるコースである。
    現在は名古屋まちなみデザイン20選に選定されているそうである。

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