動かない日

春寒の音たてすする茶粥かな
細き雨宙に吹き上げ春寒し

天気予報とは裏腹にまたも寒い一日だった。

おまけにときに小雨がぱらつき、これが北風に舞いあげられるというおまけまでつく寒さだ。
三月とはいえ風の冷たさに畑に出ることもためらわれる。
室内もかろうじて気温17度と暖房を入れる入れないの境目。猫どもに急かされていつもより早めのスウィッチが入り、足元を温めているうちにいつの間にかうつらうつらと。
動かない一日に、腹に軽くすませる茶粥となった。

解体

古アパート荒るるにまかせ春寒し

隣接していたスーパーが解体され新規建て替えとなったので余計に目立つ。

四階建てコンクリート造りのアパートの窓という窓はベニア板で覆われ中の荒れようは外からは見えなくなったが、それまでは不法投棄と思われる大型ゴミが山のように積まれ目も当てられない状態であった。これが最寄りの駅前でかつ往来の多い県道に面しているのでいやでも目に入ってくる。
解体となると数千万円はかかると思われ、そうした負担が嫌われたかいっこうに解体工事の話しは聞かない。古い建物が放置されるのは往々にして相続の問題があったり、権利関係がはっきりしないことがあるようである。
防犯上も問題ありそうで、付近住民も困ったことと頭を悩ませていることだろう。
ロケーションのいい場所に鼻つまみがでんと座っているのをみると、今日の春の寒さがいっそうしみてくる。

構図

春寒や出足のにぶき投票所

町長選の一票。

小さな町や村の多い当県では首長選はたいがいが無投票である。

ただ、現職が退いて新人同士となるとそうはいかない。
その町や村の既存勢力の争いの様相を呈してきて、拮抗すると実に興味深い。
ただ、今回はそういう様子はみられず既成勢力対革新の構図。
前町長が不祥事によって辞職したこともあって、既成勢力の一方的な勝利にさせないためにも負けを承知の革新勢候補に一票を投じてきた。
当町のような小さな田舎町にはご多分にもれず古い住民によるしがらみのようなものが澱んでおり、全国で絶賛注目中の安芸高田市の気鋭市長と議会とのバトルでよく分かるように、過去の因習から簡単にぬけきれないでいる構図が肌でも感じることができる。
カルト宗教の選挙応援をもらってはご機嫌取りの政策をすすめ、またいっぽうでは税金から多額の政党交付金をもらいながら、100人を超える議員がまともな帳簿すらつけず多額のカネが使途不明になっている言わば犯罪人集団である政権与党をのさばらせているのも、地方の実態と構図がだぶって見えてくる。

しばられない

春寒や振れど動かぬ腕時計

腕時計の電池が切れたまま。

長らく腕にはめることを忘れていたら、いつの間にか動かぬようになった。
電池を入れ替えたところで寿命的にはオーバーホールが必要だろうし、このまま机の肥やしになってしまいそうである。
手入れさえすれば何十年、あるいは百年以上もつと思われるが、そこまでするほど愛着もない。もし必要ならば買い換えればいいだけのことである。なにしろ数百円出せばちゃんと一年以上持つ時計がスーパーやホームセンターなどで売られているではないか。
時計がなくても困らなくなった暮らし。時間にしばられない、かけがえのない日々を送っていることはただありがたい。

超新星爆発

春寒しペテリギウスはいつ消える

オリオンの右肩の星ペテリギウスが終末期を迎えているという。

不安定であるために今はやや暗くなっているというので空を仰ぎ見る。
言われてみれば昔ほど四つ星がきらめかない気がするが。
核融合ができなくなってくると、やがて超新星爆発がおきて消滅するらしい。そうなると600光年と意外に近いため月の何倍も明るく、それが数ヶ月続くという。
四角形の中の三つ星というのがオリオン座の特徴で冬の代表的な星座だが、これが右肩の星が消えてしまうと見慣れた冬の夜空もずいぶん違った印象になるのだろうなあと思いながら寒空に思いをいたすのである。

水を逃がす

閘門の水の引く間の春寒し

「隅田川」と言えばやはり桜だろう。

これを水上から眺めたらどんな風に見えるだろうか。
昔から有力な交通手段として水上バスが利用されてきたが、最近では観光が目的の水上バス、いわゆる運河クルージングが人気と聞く。
納涼船は古くからあるが、いまでは四季・昼夜を問わずお台場を巡るツアー、スカイツリーを巡るツアー、隅田川にかかる橋を巡るコース、などなどいろいろあるようだ。

この運河クルージングで一度体験してみたいものに「閘門」がある。これは、言わばパナマ運河のようなもので、交差する川の高低差を調節するものである。東京では「扇橋水門」が有名である。なんでも、高度成長時代の地下水汲み上げによって、地盤沈下が著しい江東デルタ地帯の洪水を防ぐため、川を掘り下げたので、隅田川や荒川と行き交う船の便宜をはかる必要が生じ、水位調節するゲートを設けたのだそうだ。

大阪にも「毛間閘門」と呼ばれるものがある。これは明治後期に完成したもので大先輩。こちらは、淀川の水を逃がして市内の洪水を防ぐのが目的のもの。何年か前の吟行コースにもなったところ。
東西奇しくも昔から水運によって発展した歴史をもつが、それは取りも直さず氾濫・洪水に立ち向かう必要に迫られ、知恵の限りを尽くした戦いの歴史でもあったろう。

花の時期にはまだ遠く、隅田川の風はまだまだ寒いことだろう。

遠大な計画

あと一枚薄着したくも春寒し

風はなさそうだけど空気が冷たいので自転車に乗る気がしなかった。

ほんとは往復60キロ、奈良市内に行きたかったんだけど。
結局クルマで出かけることになり、そのまま帰るのももったいない(?)ので国道24号線を北へ。
木津川を越え京都府に入ると国道は木津川沿いに京都方面に続く。

実は、この木津川に沿って「京都八幡木津自転車道」というサイクルロード(CR)があるのをご存じだろうか。
24号線と木津川がクロスする地点から京都の嵐山(渡月橋)まで約45キロあるそうだ。
木津川を下り淀川に三川が合流するあたり、その宇治川を越えると今度は桂川を上るというリバーサイドロードが大好きというサイクリストには涎がでそうなCR。
NHKで火野正平が視聴者のリクエストに応えて全国を自転車行脚する番組をやっているが、その初回がこのコースを走っていたのが印象深い。
奈良に来たなら必ず行ってやろうと思っていたので、今日は下見も兼ねたわけだ。CRだけで往復90キロ。もし自宅から直行となると延べ150キロ以上になるので、かなりハードではあるがチャレンジし甲斐はある。

と、まあ大きなことを言ってるが、少々の寒さで腰が引けてるようでは当分実現する見込みはないとは言えるが。
まづは自宅から木津までの部分はJRを利用するという案がいいだろうな。