橋銘板に残る字の名苔の花
苔咲くや木橋の欄干朽ちやすく
「苔の花」は夏の季語である。
苔は梅雨のころ湿ったところに盛んに茂るものだが、生殖器官が苔の間から伸びてきて花のように見えることからこれを「苔の花」と見立てたものである。
これを今頃見かけたということは、この時期に相当苔の繁茂条件が整っている状態とみてよく、もう季節がどんどん人間の暦感覚を追い越してゆくようなものである。
人混みを避けて、人の少ない所をねらって歩けば、視線もふだん目の届かないところに届く。
新コロナウィルスがピークアウトするまでしばらくは、このような一人吟行で季材をこつこつ拾い上げてゆくしかない。
苔の連想は黴といったら叱られそう。
何となくじめじめした湿気の多いことから連想ゲームのように浮かぶ。
掲句のように詠まれると苔のイメージも変わります。
一人吟行の良さですね。
これほどあっけらかあんとした明るいところの苔というのも何か自然じゃないような感覚です。
苔と黴、似たような環境で育ちますものね。