競演

ほととぎすここは譲れぬ声比べ

時鳥の鳴き声というものはすぐに遠ざかってゆくものだ。

なぜなら、彼らはもともと渡りの習性があるうえに、一カ所にじっとはしないで山里、棚田などを渡り啼くものだから。鶯も藪など低いところを移動する習性があるが、時鳥ほど速くはないし、自分の縄張りを主張するときなどはまず動かないで佳い声をいつまでも聞かせてくれる。
時鳥と言えば、夜中の夢うつつのなかで聞きとがめてもすぐに声は遠ざかっていく。啼いてるなと思っても声の主はつねに移動しているので長くは楽しめないものだ。
時鳥の句には久女の有名な句、
谺して山ほととぎすほしいまゝ 杉田久女
がある。おそらくこれは山峡をこだましながら渡っているからながく聞こえたにちがいないと想像する。
ところが渡り途中の二羽が出会うと、縄張りを競うかのように延々と鳴き比べすることもあるようだ。こうなるといつまでもつづく夢の競演となり、いつのまにかその虜になって聞き惚れてしまうことになる。過去に一度だけしか経験したことがないが、あれは決して忘れられないくらい貴重な時間だったようだ。

“競演” への2件の返信

  1. 鶯はこの辺でも聞かれますがホトトギスは先ず聞けません。
    先日ウオーキングの途中で鶯の声を聞いたが以外に遅い時期まで鳴いてるな~と思った。

    1. 鶯は秋口ごろまで里に降りてますね。
      時鳥の声を聞くのは当地では年に一度あるかないかの程度で珍しいくらいです。たとえ啼いていても気づかないことの方が多いのでしょう。それだけ接触する機会が少ないのです。

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