霊気さえ

白南風の大台ヶ原霧消せる
黒南風の荒れて休漁熊野灘
黒南風の荒れて休漁ぜひもなく
黒南風の大台ヶ原吹き上ぐる
黒南風の湿りに霊気はらみゐて
黒南風の修験者まろぶ峰を吹く
黒南風の南都の領巾を重たうす
黒南風や御紋の領巾の打ち返り
黒南風の浜吹きたらず峡渡るく

黒南風は梅雨のうち吹く南風を言う。

この風が吹く頃空が暗くなるところから名づけられた。
対して、梅雨が明ける頃南風が吹いて空が明るくなるのを白南風と呼ぶ。
少々理屈っぽくはあるが、言われてみるとなるほどそうかもしれないと思えてくる。

周りを山に囲まれたヤマト、とりわけ南には熊野・大峯の重畳たる峰みねがつづく。
これら険しい峰を吹き越えてくる風にはどこか山の霊気が漂う。

“霊気さえ” への3件の返信

  1. 「南風」で「はえ」。知識としては知ってるのですが実感はあまりありません。「東風」は道真で有名なので春になるとピンと来るのですが。「南風」を詠んだ有名和歌・俳句ってあるのでしょうか。

    1. 歌はよく知りませんが、俳句では芭蕉に、

      風の香も南に近し最上川

      「南」は漁師や船乗り言葉で南風を意味するようです。
      想像たくまくして詠みたい季題ですね。

      1. 「南風」で調べると大家の句で、

         黒南風や島山かけてうち暗み・・・高浜虚子
         黒南風に水汲み入るる戸口かな・・・原石鼎
         黒南風は伏屋のものを染めつくす・・・相生垣瓜人
         黒南風や潮さゐに似て樹林鳴る・・・占 魚
         沖通る帆に黒南風の鴎群る・・・飯田蛇笏
         和歌の浦あら南風鳶を雲にせり・・・飯田蛇笏
         あらはえや雲のちぎれに月さやか・・・桂 居
         黒南風や屠所への羊紙食べつつ・・・中村草田男
         黒南風に嫌人癖の亢ずる日・・・相馬遷子
         白南風の夕浪高うなりにけり・・・芥川龍之介
         白南風やきりきり鴎落ちゆけり・・・角川源義
         白南風や永病めば土摑みたし・・・香取哲郎
         いや白きは南風つよき帆ならむ・・・大野林火
         海南風死に到るまで茶色の瞳・・・橋本多佳子
         クラリネット光のごとく南風にきこゆ・・・川島彷徨子
         汐満てりはえとなりゆく朝の岬・・・及川貞
         のけぞれば吾が見えたる吾子に南風・・・中村草田男

        家族愛の句をよくした草田男には「吾子」がつきものみたいですね。

        万緑の中や吾子の歯生え初むる

        これは「万緑」を季語として認めさせた有名な句です。

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