練度

竹騒に耳研ぎ澄ます初音かな
竹騒に調子半ばの初音かな

犬も歩けば棒に当たる。

冷たい風をついて外を歩いたがその甲斐は十分にあった。
畑で抜いた葱や大根などをぶら下げながら帰る道々、信貴山から流れ出す川べりに沿って竹林がもはや手をつけられないほど茂っているのが続くところに出る。
風でざわざわ騒ぐ真竹の擦れ合う音に混じって、本調子半ばという具合の鶯の鳴き声がはっきり聞こえる。当地より数度気温が低いと言われる榛原でさえ半月以上前には初音の報があったので、当地のものは相当練度が上がってきていたとも言えようか。
これより半年以上家の近くの八幡さんの杜から、信貴川沿いの竹林から、朝に夕に佳い声が慰めてくれそうである。

春告鳥

一声のしかし確かな初音かな

ふいに竹林から聞こえてきた。

まさに「藪から棒」という感じである。
今日は四月中旬の陽気とかで、初期とは思えないくらい確かな音程で一年ぶりの鶯の声を聞かせてくれた。
当の鶯にしてみれば、とっくに鳴き始めてたよと言うことだろうが、そういうチャンスにはなかなか巡り会うことは少ないので私にとっての初音と言うことである。
この辺りでは二月中旬頃それまでの笹鳴きから本鳴きに変わるとされている。
梅に鶯とはよく言ったもので、春告鳥の別名もすなおに頷けるのである。

遅ればせ

出不精の身にはじやうずの初音かな

この2月はこもりがちで俗世間とははなれていた。

ここしばらくの春らしい天気でようやく歩いてみる気になった。
さっそく棒にあたったようで鶯の初音にめぐりあえた。初鳴きのシーズンはとうに過ぎているので鳴き声もなかなかのもので、この一二ヶ月いかに自然から離れた暮らしをしていたのかを実感することになった。
たまたま居合わせた人も足を止めておたがいうなずき合ったが、かれにとっても初音だったのかもしれない。

耳を疑う

行き交ふる人とうなづく初音かな

囀りも初音も。

風ひとつない穏やかな日。気温もぐんと上がって桜が開いてもおかしくないような日和である。
とくに鶯はこれが初音かと耳をうたがう熟練の域に驚かされる。
別な場所でも二回目の鶯を聞いたが、こちらは幼くていかにも初音という風情。
初音の林では種類は不明だが明らかに鳥の囀りも聞こえてきて、人の皮膚感覚ではまだ冬のようなものだが自然界はすでに春が満ちてきている。

季節先取りする必要はないにしても、自然界に敏感に反応して季節との交わりが楽しめるたら毎日が潤うことだろう。そのためにはせっせと外を歩いて自然と直にふれあうしかないのだ。

蕾動くか

ダム渡る色なき風の初音かな
ものの芽の集まればみな白く見ゆ

梅郷・月ヶ瀬ダム湖を渡る橋の上のこと。

今年初めての声を聞いた。梅の花など随分先のことだと教えられたあとだったので、まさかのことであった。
橋のたもとにある観光案内所を出たあと、あてもないまま橋の上まで行こうとするとどこからか分からないがハッキリと鶯とわかる声が聞こえた。開花していれば文字通り「梅に鶯」だが、蕾が動き始めようかというものの枝すべてが白いダム光景にはちと寒々しい初音であった。

補)今日はまほろば句会吟行の日につき予約投稿です。
追)今日のNHK「昼ぶら」は月ヶ瀬からだったようですね。