解放

白南風や新規ジャンルの本借りる

実質的な梅雨明けのようである。

あっという間に真夏日の基準35度を超えて、炎天に長くたっていられない。
バイクの受ける風もむせぶような熱さ。
しかし、空気はわりとからっとしていて木蔭などにいれば何とかやり過ごすことができた。おかげで不快指数は上がらず、梅雨の陰鬱なはりつくような蒸し暑さからは解放されたのは嬉しい。
家事の方でも久しぶりの洗濯日和とあってせいぜいした人も多かったのではなかろうか。
生きているうちは気温はもう十年前のものに戻ることはないだろうが、「陰湿感」から解放されるだけでも喜ばしい。

梅雨明け

白南風やカーテン吸はれては吹かれ

朝のうちはじっとりと湿って重い空気に気が滅入るほどであった。

それが昼近くになるにつれ、みるみる軽い風がふくように変わった。
すかさず梅雨明け宣言があった。
この分では今日は日中エアコンも使わずに済みそうである。

晴れる

白南風や干さるるものの命帯び

梅雨明けかと思われる心地いい風。

ひさかたに乾いた風が汗ばむ肌に心地いい。
だが、喜ぶにはまだ早いという。また明日は下り坂とか。
それでもこうした日が訪れるようになると、梅雨もそう長くはないと心も晴れるのである。

町旗はためく

白南風や大和国原ン中広くしてく

目の前に真っ白な入道雲が立った。

一気に空が開けて、盆地の眩しいこと。
役場の町旗も心なしか明るく見える。
梅雨が明けたのがこの目でもはっきりと分かる一日となった。

ついてゆく

白南風の三角点の嶺を吹く

今日は室内の涼しいところでも32度ある。

強い南風が吹いて、まるで梅雨が明けたように明るい雲が高いところを飛んでいる。
朝方70%程度合った湿度も、昼頃からは50%台に下がっていくらかしのぎやすくなったが、それでも身の置き所もないように暑い。風は生熱いが、あるだけましで、エアコンはまだまだ我慢だ。

大峯の稜線が見えるのも久しぶりで、吉野から連なる山塊が黒々としている。
太平洋から吹き上げた風が熊野の山々を渡ってきたのだろうと想像すると、無性に熊野の海が恋しくなった。

これを書いていて、どこからともなく聞こえてくる虫の音に気がつく。
これではまるで梅雨から明けて一気に晩夏に達したようで、体も感覚もとてもついてゆくことはできない。

空が明るくなった

白南風や飛行機雲のとどまらず
白南風の窓の茜に暮れなずむ

空がいっぺんに明るくなった。

南風が強くて、カーテンを巻き上げている。
雲も真っ白なのが、高いところのものはゆっくり、低いものはどんどん南から北へ流れてゆく。
飛行機雲が割り込んだと思ったら、すぐに太い雲になり他の雲と見分けがつかなくなった。
入道雲でさえ今日は形無し。たちまち形を崩されて浮き雲と化すくらいだ。

暑さといい」、空の明るさといい、実質的に梅雨明けだろう。

夕空は大変美しい茜雲となった。

霊気さえ

白南風の大台ヶ原霧消せる
黒南風の荒れて休漁熊野灘
黒南風の荒れて休漁ぜひもなく
黒南風の大台ヶ原吹き上ぐる
黒南風の湿りに霊気はらみゐて
黒南風の修験者まろぶ峰を吹く
黒南風の南都の領巾を重たうす
黒南風や御紋の領巾の打ち返り
黒南風の浜吹きたらず峡渡るく

黒南風は梅雨のうち吹く南風を言う。

この風が吹く頃空が暗くなるところから名づけられた。
対して、梅雨が明ける頃南風が吹いて空が明るくなるのを白南風と呼ぶ。
少々理屈っぽくはあるが、言われてみるとなるほどそうかもしれないと思えてくる。

周りを山に囲まれたヤマト、とりわけ南には熊野・大峯の重畳たる峰みねがつづく。
これら険しい峰を吹き越えてくる風にはどこか山の霊気が漂う。