電線団子

つばくろの八の字ループ昼の月

ずいぶん高いところを旋回しては去って行く。

しばらく野菜畑にタッチアンドゴーするように飛翔していたかと思うと、やがて大空をいっぱい使って高く旋回を始めた。
晴れ晴れとした青空を堪能するように燕の群が広い場所を飛び交っているのを、何もかも忘れてただ目で追っているだけの時間。数分だったろうか。先月にも燕が来ていたのを確認しているから、初燕ではないのだがひさしぶりに伸び伸び旋回しているのを真下から眺めているだけで時間を忘れそうになる。
のど元の臙脂カラーもしっかり確認できたし、燕独特の翼がすべるように描くループも悠然としていた。
群れているところから渡ってきた仲間、あるいは家族なのかもしれない。
首を上げていると、下弦の月が青空に白くクリアに輝いてもいた。このところはからずも心晴れ晴れする景におおく出会えるのはありがたいことである。
あと一か月もすれば一番子が巣立ちして黄色い嘴が電線団子という景に出くわすかもしれないと思うとわくわくさえ感ずるのである。

雨後の空に

つばくらめつの字をかいて辻の軒

今年はほんとに不思議だが燕が少ない。

というより、年々減っているのではないかとさえ思われる。
とは言え、平城京の塒入りのニュースなど聞くといるところにはいるらしい。
これは近所の話にかぎるのかもしれないが、思い当たる節はある。
ひとつには新しい団地で燕の巣作りの難しい家が多いこと、つぎにここでもご多分にもれず烏が多く巣をかけるには危険が多いことなどである。
ただ五年ほど前までは近所の家に巣をかけて子育てをうまく成功させていたが、その後も更地にどんどん家が建ってきたことも影響しているかも知れない。その証拠にその更地を縄張りにしていた雲雀がこの一、二年見られなくなったことである。朝起きての頭上に揚雲雀の元気な囀りが一日の始まりを楽しくしてくれていたのに。
やはり燕が減ったのは鳥が生きていく上での条件を失ってしまったのが最大の要因だろう。

きょうやっと雨があがって空気が澄んだ空を、一瞬燕を過ぎっていったのを目撃した。