なべて湿れる

苔生して一位の森の五月闇
祓戸の千の灯籠木下闇

今日は半夏生。

この頃降る雨を半夏雨と呼び、梅雨終盤の激しい雨をいう。
まさに今前線が西日本に居座って、とくに南九州方面が危険なほど降っていると聞く。
当地の朝は激しい雨音に目覚めたときは春日大社吟行予定の参加も危ぶまれたが、集合時間となる頃にはすっかり上がった。ただ、湿気はただものではなく春日の森はなにもかも梅雨湿り。
背の高い一位樫の森もおぐらくまさに五月闇。数ある石灯籠も大きな木の下で苔生していた。

百鬼夜行の漆黒

五月闇歩き煙草の咎めなく
いらへずば誰何またある五月闇

本来は梅雨の夜の闇を言う。

実際に詠まれるのは夜とは限らず、昼間でもものが判別できないような暗さをイメージさせるならば可のようだ。

小暗き

朱鳥居くぐりて後の五月闇

「五月闇」とは雨期の月のない夜や薄暗い昼間をいう。

日常で使われることはなく、俳句の世界だけで生きながらえている季語かもしれない。
ある句会の兼題で今日はその習作である。
深い森におおわれた神社、お稲荷さんのような朱い鳥居とその奥には深い緑に包まれた闇が広がる。そんな根津神社近くの光景をイメージで作ったものだ。

月夜見宮(つきよみ)の神の寝ませる五月闇