待っている

上流へみなの口開け五月鯉

今日は北風だったようだ。

というのは、平群谷を南北に流れる竜田川(私は平群川だと言っている)の堤防沿いに毎年何旒もの鯉幟がひるがえるのであるが、それがみな見事に北の生駒方向、つまり上流に向いていたからだ。
それは、まるで上流から何かいいものが流れてくるのを待つ鯉の群みたいで滑稽さを誘ったのである。
毎年少しずつ本数を増やしているようで、平群谷に年々華やかさをもたらしているようだが、このように北へ向いているのを見るには珍しいことである。
空気もまた北の風だったせいか、気温は25度くらいまで上がったがどこかからっとしていた。

生駒借景

父さんの糸が縺れる五月鯉
ててなしの親子泳げる五月鯉

父親が風に飛ばされてしまった。

竜田川土手に何基も鯉幟がひるがえっているうちの一基だ。取材に來ていたカメラマンがそれを目聡く見つけて、回収しては飛ばされないように竿の根元に巻き付けるように戻している。渋滞の車からそれを眺めていたのだが、なんとなく心温まる光景であった。

川に鯉幟の連隊を並べるのは各地で見られるようになったが、竿一本一本に親子の幟をあげるのはあまりないような気がする。およそ10数本はあったろうか、どれも一様に新緑の生駒山地を借景にして西風に撓っているのは絵になる構図ではあった。