最初の節句

人日の回覧廻す亭主かな

期せずして新年の挨拶を交わすこととなった。

お隣からはいつもなら夫人から回覧板が届けられるのだが、今年の新年第一回はご主人がインターフォンに立たれた。
いつも無口なかただから言葉を交わすことも少ないのだが、今回は新年でもあるのでそれぞれ二言三言の御慶を述べあった。
お隣も職をひいておられるのでおたがい時間はあるのだが、男同士というのはえてして顔を合わせることは少なく図らずもの挨拶である。
昨日七日は人日の節句、というより七草粥の日というほうがポピュラーだが、元日を「鶏の日」として以下「犬」「羊」「猪」「牛」「馬」「人」「穀」と決め、それぞれ該当のものは食べない(殺さない)とされた。したがって、今日八日は穀物を食べてはいけないわけなのであるが、現代人の暮らしからはどれもすっかり姿を消してしまったようである。

甘味、旨味

人日の臼歯につぶす雑穀米

人日、じんじつ。

すなわち、1月7日のこと。俳句をやらないひとには工数の単位の「にんび」と読むことだろう。
古代中国の占いの書に、6日までは鶏や羊など動物を占い日が続くが、7日に初めて人間を占うとあるらしい。この日に天気よければ吉、雨なら凶だとか。
昼過ぎに雨が雪に変わったので、今年は凶のなかでも大凶かもしれない。時はあたかも非常事態宣言の日。昨年の春よりゆるい規制なので感染は横ばいが続いて、簡単には収まらないだろうというのが専門家の見立てだ。
ガースー政治には何一つ希望のもてない状況下では、ひたすら身を縮めているしかあるまい。
今夜は七草粥ならぬ二十穀米が夕食に出て、久しぶりに奥歯を鍛えてやった。すると、甘味がじわじわ広がって、これからもときどきは雑穀米をお願いするのであった。