古書匂ふ十一月の馬鹿陽気
五十年ぶりにペーパーバックを手に入れた。
驚いたことに細かい字が裸眼でまだ読める。その日のコンディションによって差はあろうが。
初版1944年の短編集で、ページ数にして470ほど。ペーパーバックとしては厚い方だろう。
入手したのは何版目か知らないが、かなり古いものと思われる。
高校時代にこうしたペーパーバック小説を読みあさったものだが、文字の大きさはその当座のものと同じだろう。辞書を引きながらせまい行間に日本語訳を書き込みながらよくも読んだものだと感心する。
さすがにもうこの歳ではそんな芸当はできないし、なにしろ別に知らない単語があっても訳す必要もない。どうしても意味が取れなければカシオの翻訳機で確認するだけだ。いまさら語彙を増やさなければという切迫感もないわけだし。
ランダムにページをたぐって斜め読みしてみたが、一ページくらいでは疲れないのを知って何だか元気がでてきた。短編だから、いくつかは苦痛なくこなせるという勇気も沸いてきた。
どのページを開いても古本独特の匂ひ。いいものである。