蒸発

一片の雲かき消えて天高し
かき消ゆるもののひとつや秋の雲

西へ向かって飛ぶ三機の機影。

機体の航空会社ロゴが肉眼でもよく見える高度からして伊丹方面へ向かっているようである。
あとは小さな雲一片だけが視野に入るだけの青空。文字通りの秋空である。
気温も上がって日中の散歩は快適である。
その小さな雲は見上げているあいだにもどんどん存在が薄くなってゆく。やがてシャボン玉が割れるようにあっという間に消えてしまった。まさしく雲が蒸発したのである。

西の方から高く飛んできて東へ向かう機にも飛行機雲はもちろん出ない。明日も好天気のようである。

パロディ句

天高し奈良にふたつの大宮趾

パロディである。

原典はご存じ芭蕉さんの「菊の香や奈良には古き仏たち」。
だだっ広い草原となった藤原京では、虫だの限られた素材に絞られた句ばかりになるだろうと予想して、奈良盆地全体を俯瞰するような気分で作ってみた。
当然選はもらえないものと思っていたが、なかには酔狂な人もいたもので一票いただいた。

ほんとに、平城京といい、藤原京といい、なんにもないスペースをこれだけ確保したのは、外の県ではどこにもないだろう。