みすぼらし

強東風に白梅いとどやせにけり

あれほど爛漫と咲き誇っていた白梅が一気に吹き飛んだ。

曇り空とはいえ昼頃まではいかにも春のあたたかで何をしていてもストレスを感じることはなかったが、午後から青空がのぞくようになって風が冷たくなって一気に体感温度を下げてしまった。
梅はと見ると朝とは様子がどうも違っておかしい。枝にびっしりとついていた花片が俄然減ってしまったのが原因のようだ。
それにしても梅というのは一気に散ることもあるんだと知った。風さえなければはらはら散る風情は桜にも負けないと思っていたが、こうもあっけらかんと吹き飛ばされてしまうと急に梅が見窄らしく見えてしまうのだった。

あるかなきかの

強東風の攫ふ拝観しをりかな

花か香か。

折しも、菅原の里では梅が満開で、菅原神社では盆梅展が開かれているが、とくとく思うに梅の魅力はやはりその香りにあるのだろう。兼好さんに反論する訳ではないが、やはり梅は桜と違う。桜に比べ花期は長く、その最後までよく見ることができるが、そのことがかえって花の魅力というものを損じているようにも思える。かわりに、香りには花の盛衰にかかわらないものがあって、目をつむってでも、長きに楽しめるのがいい。
屋外に置かれた鉢からはそこはかとなく香りが立ちのぼるし、それがまた適度な風があるとそれぞれに鼻を近づけては確かめてみる楽しみがあり、それがどの鉢のものとも分からないことも多いのが奥ゆかしくていい。一方室内はと言うと、一歩足を入れてみるだけでそれぞれの香を凝縮した濃密な空気に全身が包まれてきて、これはこれで豪華な雰囲気を醸成していた。
個人的には、あるかなきかの香を楽しむ屋外のほうが好ましいと感じたが、さりながらこの日は大宰府にもとどけとばかり風に勢いがあるので、ゆっくり香りを堪能するどころか、首をすくめるほどの寒さには閉口した。
喜光寺の弁天池に浮遊するものが、あっちにもこっちにも振り回され漂流しているのが印象的な日であった。