夫婦愛そして動物愛

盲導犬連れ添ふ径の忘憂草

万葉読書会に毎回盲導犬を伴って参加する人がいる。

会場ではまったく声も立てず感心するばかりだが、飼い主も心得たもので、読書会が終わるとすぐに広場に連れ出し大きな木の蔭で用をたさせたりして労っている姿を見るだに心温まる。
ご主人と思われる付き添いもいて、かいがいしく夫人とわんちゃんの面倒をみておられる姿もまたいいものだ。
爽快な気分にしてもらって、しばらくは万葉の径を散歩して心豊かに帰路についたのである。

橙色の花

萱草の花の岬を波洗ふ
萱草の花に埋るる流人島
絶海の流人の嘆き忘憂草
岩をかむ波のとよもし忘憂草
絶海の波涛くだけて忘憂草
萱草の花のとよもし海なだる
さう言へばかつて庭には忘草
忘憂草生ひける庭のなつかしき

忘草は萱草(かんぞう)の古名である。

忘れな草とは似て非なるもので、万葉の時代から詠み込まれていて、憂きことを忘れさせてくれる草、という意味で使われてきたらしい。

かつては拙宅の庭にいつの間にか自生していたが、またいつの間にか消えてなくなってしまっていたことを思い出す。無くなった後しばらく気がつかないというのだから、ずいぶん間抜けな話で、忘れ去られていた萱草がかわいそうというものである。