橙色の花

萱草の花の岬を波洗ふ
萱草の花に埋るる流人島
絶海の流人の嘆き忘憂草
岩をかむ波のとよもし忘憂草
絶海の波涛くだけて忘憂草
萱草の花のとよもし海なだる
さう言へばかつて庭には忘草
忘憂草生ひける庭のなつかしき

忘草は萱草(かんぞう)の古名である。

忘れな草とは似て非なるもので、万葉の時代から詠み込まれていて、憂きことを忘れさせてくれる草、という意味で使われてきたらしい。

かつては拙宅の庭にいつの間にか自生していたが、またいつの間にか消えてなくなってしまっていたことを思い出す。無くなった後しばらく気がつかないというのだから、ずいぶん間抜けな話で、忘れ去られていた萱草がかわいそうというものである。