幅をきかす

濠は田になりて墳墓は懸り藤

前方部分は竹の秋。

後円部分は懸かり藤。
対照的な姿を見せて中型古墳が目の前にある。長さは100メートルほど。この規模の古墳は盆地を走ればかしこに見ることができるが、どこも大方は樹木に覆われている。似たような小さな森は各地にあるが、古墳はたいてい前方後円墳でありその形から識別は簡単である。
人の手が入らないことが多く竹林が幅をきかせているので、今日のような藤に包まれて目を引くのは今の時期だけ。それもまもなく終わろうとしている。

山膚

平群谷出づる峠の懸り藤

これは霾ぐもりというべきか。

初夏の陽気に遠い二上山はじめ青垣に靄がかかっている。
午後三時の気温が三十一度。真夏日である。朝方こそ長袖をはおっていたが、日中はTシャツ一枚で十分である。家にいるときは靴下だって暑苦しい。
今日はホームセンターのはしご。この店にないものはあそこで、あそこにも無ければまた一軒。
目当ては農業資材だが、ワークマンが近くにあったのがブレークして以来小さな店は畳んでしまったようで、ホームセンターの作業パンツで間に合わせることにもした。吸汗速乾。これはいい。今まで何本かのGパン、綿パンでやっていたが膝がずいぶん薄くなっていつ破れるかというぎりぎり。
昨年までは会社の作業服がしっかりしたもので重宝していたがさすがにもう限界。長いオフィス勤めから馴れない工場勤務に変わった思い出の上下だがおさらばである。
山の藤が見事な季節となった。サングラス越しにもくっきりと藤色が山膚に浮かんでいる。桐の花も今頃はさいているであろう。

夏の色

左よし右よし平群懸り藤

藤もほぼ終わりかけ。

つい先日までは桜のあとを追いかけるように山藤が平群の里にアクセントをつけて、なかなかの眺めを楽しめた。
今日通りかかると、藤に絡まれていた木がいよいよ茂りはじめ、褪せてきた藤を飲み込むように日々山容がうつろいでゆく。
遠くを見れば常緑樹と落葉樹の高いコントラストに彩られていた二上山も三輪山も、コントラストがあせてきて濃い緑一色になろうとしている。こうなるとまだ生えそろわない若草山の褐色の山膚が遠目にも際だってわかる。
盆地は夏の色に染まろうとしている。