左よし右よし平群懸り藤
藤もほぼ終わりかけ。
つい先日までは桜のあとを追いかけるように山藤が平群の里にアクセントをつけて、なかなかの眺めを楽しめた。
今日通りかかると、藤に絡まれていた木がいよいよ茂りはじめ、褪せてきた藤を飲み込むように日々山容がうつろいでゆく。
遠くを見れば常緑樹と落葉樹の高いコントラストに彩られていた二上山も三輪山も、コントラストがあせてきて濃い緑一色になろうとしている。こうなるとまだ生えそろわない若草山の褐色の山膚が遠目にも際だってわかる。
盆地は夏の色に染まろうとしている。
山の色は今が一番と思える。
土曜日帰省の折、四方八方山々に囲まれた実家は緑色にあふれて全身に浴びるような幸福感に満たされた。
来年のこの時期にはもう家はない。
名残り惜しさとゆく春が余計に愛おしく感じられる。
思い出がいっぱい詰まった「家」が記憶の中にしか存在しなくなる寂しさはいかほどでしょう。私も捨ててきた家であるのに、無性に恋しくてたまらないときがあります。