窓枠

矮犬の主人したがへ春疾風

風の強い一日だった。

夕方窓を閉めようとしたら、窓枠に土埃が厚く積もっている。しまったと思った。
そう言えば、黄砂もあるとか言ってたような。うっかりしていた。
目がちょっと飛びだしたような小さな犬がリードを長く引いていたが、今日みたいな日は土埃が舞い上がってさぞ困ったのではないか。それでも元気よく先導していたのでとくに困らなかったのか。

やりきれない

春荒や砂噛むやうに腰うづく

起こしても起こしても倒される。

今日はそんな強い風に翻弄される一日であった。加えて時折雨が激しく叩きつけてきて、最後はもう倒れたものを起こすのは止めてしまった。
これからは、風雨災害のシーズン、コロナ騒ぎに加えて百年に一度の災害が加わったら果たしてこの国はどこまで耐えられるのであろうか。加えて、非常時に国民の命を守れない政治によって命を落とすのではやりきれない。

雲雀野のオレンジ特急

風鐸の騒ぐは一基春疾風
風鐸の音を攫ひゆく春疾風
春疾風大風鐸を弄ぶ
料峭の風に風鐸響きあふ

平城京の復旧工事もずいぶん進んでいるようだ。

あまりの風の冷たさに逃げ込んだのが、大極殿すぐそばに完成した情報館。ここで、VTRなど鑑賞しながら暖房に身を温めて吟行再開。
外ではバーダーたちが身じろぎもせずに三脚に据えた望遠鏡を覗いている。平城京跡は鳥たちにとってサンクチュアリだけに、次から次へといろんな鳥たちが顔見せに来てくれて、今日の人気一番は「アリスイ」。半径10メートルほどの人垣の真ん中にゆうゆうと餌を探している。
朝の内は風花も舞って、耳も手も痛くなるほど寒くて雲雀は出ないかとあきらめていたら、やがて日が高くなってくると目の前のそこかしこに雲雀が揚がりかつ落ちてくる。家の近所でもよく見る雲雀だが、これほど多くの雲雀を目の前にするのは初めてだ。

雲雀にしばらく見とれていると、大極殿の大きな風鐸がおりからの風に激しく揺すられて、重厚な響きが聞こえてきた。どういうわけか,四隅のすべてが鳴るのではなく、西側のひとつだけが騒いでいて、そこに風が通っているのがよく分かる。
大極殿を見晴るかして、そのずっと向こうには若草山の末黒野が見える。

南に目を転じると、近鉄特急のオレンジがひろい宮跡を横切って行った。

雲雀野を分けて特急突っ走る

巻き上げる

目に見えぬものおぞましき春疾風

春一番だそうである。

「だそうだ」というのは、どうもこの盆地では疾風怒濤をまくような風が吹かないのである。
生駒や金剛・葛城に遮られでもするのだろうか。
今日もまた、いつもよりちょっと風が吹くなあという程度しか感じられない。

土埃が舞うようなほどでもないし、道端に落ちているゴミなども風に飛ぶようなことはない。
ただ、ふと思うのは、花粉や最近何かと世間を騒がせているPM何とやら、目には見えないが厄介なものたちが跳梁跋扈しているのではないかということである。
一般に雨後の花粉などは、雨で地面に落とされて溜まっていたのが、一気に舞い上がるので要注意だという。
この二、三年軽い花粉症の症状が出るので、インフルともども気をつけることにこしたことはないだろう。
今日は黄砂が舞わないだけましか。