南京袋

鹿苑の喜びさうに木の実落つ

大量の団栗が転がっている。

というか、墳丘の裾を転げて集まってきているのだ。南京袋にでも入れて鹿苑に持って行ってやれば、鹿も大喜びしそうなほどある。
なんだか、季節はどんどん進んでいるような毎日。
ちょっと歩けば汗ばむが、少しやすんだだけですぐ汗が引いて寒ささえ感じるほどだ。
今日から11月。いよいよ冬支度。

帰り花かとみたが

玉砂利に粒と溶けゆく木の実落つ

椎の実がいっぱいこぼれている。

ただ、落下した先が境内の玉砂利で、木の実はまるで石の粒になったように溶け込んでいる。

ここは奈良市白毫寺。
晩秋の奈良盆地を一望できる素晴らしい立地だ。
萩の寺、五色の椿の寺として知られるが、秋でもあり冬と言ってもいいこの時期の句材が数多くある。

名にし負ふ花の札所の冬桜

とくにこの日目立ったのが冬桜、これから紅葉のシーズンずっと咲くというので十月桜とも言える。
小型の地味な花で枝いっぱい咲いていても、春のような絢爛たる華麗さとはまったく無縁なのが冬桜の特徴。

白毫寺へ登る萩の石段は有名で、その途中で冬桜を見つけたときはてっきり帰り花かと勘違いし、

乱磴の歩をゆるめては帰り花

と詠んでみたが、場所を特定しているわけではなし、これはこれで創作句として通じるのではなかろうか。

木の実時雨に打たれる

楢の実の降るというより打つやうに
デッキ打つ木の実二三度弾みけり
靴裏になぞる木の実の丸さかな
椎の実の積もるなぞへの窪みかな
振り向けば木の実の落つる音なりし

昨日、冬鳥が来たかどうかを見に馬見丘陵に行った。

一ト番の鴨が見えたが、遠すぎて種類が判然としない。真鴨のようにも見えたが、それにしては時期がちょっと早いようにも思った。渡りの途中の鴨だったのかも知れない。
代わりに、エナガ、コゲラ、四十雀、山雀などの小鳥を間近に観察することができて飽きることもなかったのはよかった。

それにしても、外気温が26度。ちょっと歩いただけで汗ばむほどだ。これが明日をさかいに一気に寒くなるとの予報が不気味である。