縮れる

木の葉髪あれきり歳をとらぬ父
父の齢こえて相似の木の葉髪
木の葉髪櫛はね返すちからなく

櫛が通らぬようになった。

髪の数もさりながら、若い頃にくらべ極端に細くなった髪は縮れやすくて簡単には櫛を通してくれないのだ。もつれた部分をおそるおそるほぐし終わってようやく櫛もブラシも通る。
鏡をのぞけば父の齢をこえてしみじみ髪のボリュームの足らない部分も似てきたと思う。

ハレーション

二児と猫四匹育て木の葉髪
ウェブカメラ低きに据うる木の葉髪

最近Zoomというのをやってみた。

最近のノートパソコンというのはよくできていて、スピーカーはもちろんカメラやマイクまでついていて。アプリさえ入れれば簡単に始められる。で、さっそくトライしてみるとこれがよく映るし、声もよく通る。
コロナのため句会が開かれなくなって久しいが、句会形式に代用できるわけではないが、合評などを談話室的に使うにはいいツールとなる。
書類などあまり下ばかりを向いてると頭頂部が映ったりするのでカメラ位置は大事。また、ハレーションを起こしやすいので照明の角度にも注意しなければならないが。

惑わされるもの

無惨でもあるか佳人よ木の葉髪
見なかったふりも情けの木の葉髪

会釈などで思わず目に止まる景色。

これが麗婦人ならば、もう気が動転してしまっていけない。
何も見なかった顔して話を続けてみても、ちっとも身が入らなくなるのだ。
ウィッグなるもので十分カバーできるはずだが、あえてそうしない訳でもあるのだろうか。そんな妄想も浮かんでくるといよいよいけない。
良きにつけ悪しきにつけ、美人はとかく惑わす。

容色

マドンナの歳月深し木の葉髪

かつてマドンナと言われていたその人を見て誰もが声を飲んだ。

皆が若くて、誰にも輝かしい未来が待っていた頃の、多くの男子の憧れの的だった彼女とは似ても似つかない、とても同一人物とは思えない変わり様に驚いたからだ。
たとえ絶世の美女であっても年齢とともに容色は衰えるのが世の習いとは言うものの、そのギャップが大きすぎる。歳月に加え、過ごしてこられた環境などにも厳しいものがあったのかもしれない。
来し方の話題はつとめて避け、当たり障りのない話題に終始したものの、かえって距離感が広がるものを感じてしまった。

兼題「木の葉髪」の習作である。

手放せないもの

木の葉髪色褪せるともこの帽子

昔から帽子が好きだ。

最近はもっぱらキャップだが、第一子が生まれた頃の写真をみるとハンチングをかぶっている。その後いくつ帽子を買い換えたかはよく覚えてはいないが、気に入ったものがあればどこへ行くにも同じ帽子をかぶり続けたものだ。
最近は娘が折に触れプレゼントしてくれるので自分で買うことはまずなくなったが、今のBrooksBrothers社のロゴが入ったものは色といい形といい、幾分日焼けし色褪せてきてもかえって勲章のような気がしてたいそう気に入っている。同じキャップでも野球帽のような頭がやたら大きく見える茸のような形をしたものは趣味ではない。

先日、吟行旅行で同じ電車で同席した同窓生も皆帽子党。おたがいに帽子が必需品であることを笑うのであった。全員の集合写真もあるので確認してみたら、やはりみな帽子をかぶっていた。
追)一人だけは無帽でした。

今度またプレゼントしてもらうならお洒落なパナマ帽もいいなと思うこの頃である。