威圧

見上げれば見下ろし返す枯木山

ついこの間まで見事な雑木紅葉を誇っていた。

それがずんずんと色を失って、夕まづめには黒い塊のような厳しさを見せている。
無駄を削いだ山の美しさが目の前にある。
第一歩を踏み出すたび目に入るその山にはすべてをお見通しであるような威圧さえ感じるのであるが。
今日は昨日とうって変わって信貴颪もなく穏やかな日だけにかえって無言の圧をもって迫られるようである。

蝶を寄らしめ

二タ本に枯れて榎の路守る

両足をふんばって仁王立ちのさまである。

夏は大木となってこんもりとした影を作り、その葉には蝶が寄ってくることで知られている。
秋には小さな実をいっぱいつけて鳥たちの餌。
生きものにとってもありがたい木だが、人間にも縁あって一里塚によく用いられたそうだ。旧国道などを走れば、こんもりと土が盛り上がって塚のようになっているところに大きな独立した木が立っているのを見ることがある。松も用いられたそうだが、丸くこんもりと茂っていればまずは榎とみて間違いない。
当地では、郡山城下で見られるのがそうではあるまいか。一里塚ではないが、町の入り口に標として植えられた例では、中世寺内町として栄えた今井町にも古い榎の大木がある。
調べてみると、榎はよく根を張るので堤防の固めにも用いられたようで、木津川堤防の木などは京都の自然200選に入っているほどで地元から親しまれているようである。

ゆかしい

女子大はメタセコイアの枯れっぷり

正門を前景にメタセコイアの大木がそそり立つ。

この時期になると、黄葉して異彩を放つことになる。
奈良女子大のシンボルツリーともいえるこの木は、行くたびに仰がずにはいられないほどの存在感がある。
和名をアケボノ杉というらしいが、やはりメタセコイアの名が通っているし、異彩を放つ姿に対してはそのままで呼んだほうが相応しいように思える。
卒業生の方にとってどんな存在なのかは知るよしもないが、通りがかりのものには強く印象に残る何ものかがある。
来月になると葉をすっかり落とし、その均整の取れたシルエットがまたゆかしい。