全山寺院

膝病んで床几所望の棚経僧

大神平等寺の住職が盆供養にお出でになられた。

永平寺でも長年重職をつとめられ二三年前に地元に戻ってこられた老師である。
この老師はたいした人物で、廃仏毀釈でつぶされた大神神社の神宮寺のひとつ平等寺を再建され、いままた多武峰妙楽寺の本堂を再建されたばかりである。この妙楽寺は7世紀に鎌足の長男・定慧が父の墓を改葬し今の談山神社の十三重の塔を建立したのが始まりで、全山が堂宇で埋め尽くされた巨大な寺院であった。明治の初めに打ち壊され今では木々に埋もれてしまったのであるが、その一画、談山神社の十三重の塔を見下ろす位置に新しく本堂が成った。この秋にも落慶法要が営まれる予定だと言うが、コロナ禍の今どこまで盛大にできるか心配されるところである。
そのお元気な住職が、いつもなら端座されて老々としたお経をお唱えくださるのだがことしは腰掛けを所望された。仏壇に向けてちょうどいい高さの床几もなく、食卓の椅子でご容赦願うことになったがお声はいつものようにご健在であった。

ちと早い盂蘭盆会供養

二枚目の棚経僧の声もまた

今日は母の菩提寺から僧が出張ってこられる盂蘭盆会の供養日。

棚経とはお盆の時期に檀家を一軒一軒まわって仏壇の前などで経を読むことで、秋の季語である。
大変立派なお寺なので檀家も多いだろうし、うちは檀家とはいってもお寺から少し離れているので、毎年この地域をまとめて廻っておられるようである。

この棚経の僧は永平寺の要職についておられて不在の住職に代わっていつも来てくださる長男さんで、女どもは口を揃えて美男だという。法衣姿も絵になっているが、読経の声もよく通り実に涼やかである。熱注意報のさなかの日中に汗ひとつかかずにお出でになり、お帰りになるときも颯爽として車に乗りこんでいかれた。