北から南まで

信貴濡れて生駒照るてる片時雨

やはりこの時期時雨が多い。

さあっと頭上を時雨雲が過ぎ去ったが、はるか生駒には明るい日が差して山紅葉がいっそう鮮やかに見える。
雨のことは忘れて際だったコントラストにしばらく見入ってしまう。
盆地の北から南までどこかに時雨雲がかかっている日がこれからも多くなる。

天の階

西に日矢降りて飛鳥の片時雨

毎日のように葛城から二上にかけて日矢が降る。

厚い雲が葛城越えをするときよく見られるシーンだ。
いっぽう、東の方はと見れば多武峰あたりが時雨雲にすっぽり包まれている。
盆地における時雨とはたいてい片時雨で、東が降れば西は晴、西が時雨れば東は晴という具合いで、盆地全体が時雨ということはない。むしろ、そんな場合はもはや時雨ではなく、ただの「雨」なのであるが。

しぐれに寄する抒情

あの里のけぶれるあたり片時雨れ

冷えてきましたね。
明日の朝は零下一度になるそうです。
ここは盆地の遠くまで見渡されるのですが、遠くの里に時雨が通り過ぎてゆくのが見えました。
もしかしたら近いうちに雪がちらつくのを見ることができるかもしれません。

佐藤春夫の「しぐれに寄する抒情」を思い出しました。
。。。。。。
しぐれ しぐれ
もし あの里をとおるなら
つげておくれ あのひとに
今夜もねむらないでいたと
あのひとに つげておくれ
しぐれ
。。。。。
なんとも甘味な調べですね。
これを亡き岳父が書にして額装しました。強面ですが、内面ロマンティストだったんですねえ。