盆唄の谺三日を三ヶ村
対岸の二集落、こちらは一集落。
熊野川支流を挟んで北は和歌山県飛び地、南は三重県。
かつては盆ともなると出稼ぎの若い衆が帰省して、それは賑やかな盆踊り大会が開かれた。
歌は即興、これがすべて同じ節で延々と未明までつづく。午前零時前にひと休みを入れたら年寄りや子供たちは引きあげてゆくが、再開とともに歌声とかけ声は静まった集落に響き、それがまた対岸の集落にまで聞こえてくる。
このような催しは青年団が主催するが、のど自慢のお年寄りもこの日ばかりは上機嫌である。
一日一村として三日三カ所の回り持ち。真っ黒な夜道とあってさすがに子供たちは遠征はしない。もっぱら若衆の出番である。
久しぶりに会う顔ぶれどうし盆が終わればまたそれぞれ仕事に帰って行く。束の間の恋の芽生えたこともあったろう。知らんけど。
今は遠い昔話である。