小骨

爪楊枝二本使うて目刺かな

歯茎が衰えるとすきっ歯になるようだ。

そのせいで、いつの間にか楊枝の世話になることが多くなった。とともに、食卓の上には四六時中楊枝が置かれるようにもなった。
隙間が広がったので楊枝で簡単に取れることが多いのだが、それでもなかなか厄介なのが魚の小骨である。顎がはずれるのではないかと思うくらい大口開けては奥歯の裏と格闘する姿は、本人からすれば必死なのだが傍から見ていたら滑稽に映るにちがいない。
材料の木材も貴重になって高級な楊枝などふだん使いには買ってられないので、すぐに先がつぶれたり折れてしまったりで下手すると一本で済まないことがある。
目刺の骨程度ならそんなに格闘するほどでもないが、苦手なのがメバル、カレイなどの太くて固い骨。これらは下手すると歯に挟まる程度で済まないこともあって痛い思いもする。

朝食

一連の目刺値をはる名産地

目刺しも秋刀魚も鯖も出世したものだ。

乱獲がたたったのであろうか漁獲高も落ちて、市場へ行けば昔なら信じられないような値で売られている。しかもどことなく貧弱で立派なのが少ないのだ。
スーパーで売られている浅蜊も蜆も身が薄い。産地も遙か遠くなって地元産というものにはお目にかかれないし、複雑な流通の過程ですっかり痩せてしまっている。ぷっくらと太ったいいものはあるところにはあるのだろうが、当地のスーパーでは望むべくもない。
観光地などでは、へたな魚より値のはる目刺しなどあって、その昔大きな発泡スチロール入りのを山ほど買ってきて全部食べるのに往生したことに比べて隔世の感ありだ。藁を通しただけの素朴で一連の鰯など、ポリで包装されたものよりずっと高いなんてこともあって驚く。
朝食がパンとなって目刺しから遠ざかった食生活で、飲み屋でくらいしか食べる機会が限られてきたのがいいのかどうか。

塩分控えめに

一連の尻尾焼け落つ目刺かな

目刺しを焼くとき、火勢が強すぎると尻尾のほうから焼け落ちることがよくある。

僕の場合、目刺しを食うときは、尻尾を摘まんで頭からかぶりつくので、尻尾がないと困るのだ。
箸を使って目刺しを食うとなると、もう庶民の目刺しとは言えないような気もしてくる。
それに、うまく焼けたら、残った尻尾の数で自分は何匹食ったかがよく分かるし。
(塩分控えめに馴らされてるので要注意なのだ。おまけに、干物はプリン体が多いとくる)