清淨

萼の底水輪の洗ふ白睡蓮

ひとつさきがけて咲いている。

薄濁りの水に半ば埋もれて、いまにも溺れそうながら開いているのが、真っ白な睡蓮だ。
汚れた泥水に清淨な花が咲くことで知られる蓮は有名だが、睡蓮だって負けてはいない。
浮き葉が日を返していると。そこにも咲いているような錯覚を覚えるが、咲いているのはひとつだけ。
貴重な初睡蓮にしばらく見とれた。

立って眠る

睡蓮の閉じて立ちたる眠りかな

睡蓮の花が閉じる時間は意外に早い。

2時をまわっていても3時にはまだ届かず陽は十分に高いのに、薄黄色の花はもう半ば閉じかけていて光に透けている。
どうやらどの花も咲くときは上を向いているし、閉じても真上を向くらしい。観察していてそんな性向に気づいた。

蓮の蕾がずいぶん大きくなってきた。
睡蓮から蓮へ。
エルニーニョで雨の期間が長引くかもという予報だが、季節は盛夏に向かってゆく。

大パノラマ

睡蓮の咲きそめモネの美術館
山荘の美術館辞し橡の花

アサヒビール大山崎山荘美術館へ。

山崎駅すぐの踏切を渡るともう天王山への登り口である。
美術館は山の麓にあるというものの、木津・宇治・桂川大合流の素晴らしい眺望が得られると聞いたのでそれなりの登坂は覚悟しなければならないと思った。

やはり最初の50メートルほどは胸突き八丁の急登坂。最近股関節の具合がよくなくて、とくに登りが辛い。すぐに痺れてくるので休み休み、喘ぎあえぎしながらようやく2百メートルほどの山道を登った。
山荘まですっかり新樹の道であるが、山荘の入り口にあたる「琅玕洞 (ろうかんどう)」という門を擬したトンネルをくぐるとさらにまた素晴らしい庭園への誘い。山崎の合戦のおり秀吉が陣を敷いたという宝積寺も隣り合っていて、重文・三重塔が隠れ隠れに見える道である。
サイトの庭園ガイドを見てもその素晴らしさは容易に想像できるのではないだろうか。

大山崎山荘美術館の睡蓮

館内ではモネの「睡蓮」四幅に酔い、池を見ればもう睡蓮の花が一輪咲いている。三川合流、そしてその向こうの石清水八幡さんの大パノラマをバルコニーから眺め、館内の喫茶店で珈琲で一幅。

紅橡の木の花
美術館の外に出れば、盛りを過ぎたとはいえ姫橡の木の紅い花が見送ってくれた。

竹の里で

小流れにかすかに揺るる白睡蓮

今月の吟行は6月にも行ったことのある生駒市の高山竹林園。

丘の斜面にもうけられた園には流れがしつらえられており、ところどころ流れをとめて池となっている。池には蜷がびっしり這っていたりして、季節には蛍が飛び交うのではないかとも思われる。
狭い池にはポツポツと睡蓮も咲いていて、開ききった花がその下を流れる水によってかすかに揺れていたりする。