長旅

長雨の涯を低きに秋燕

10羽以上いたろうか。

雨のやんだ田の上をしきりに群れ飛ぶ。蚊などの小さい虫がたくさん飛んでいるのかもしれない。
小集団にまとまっているのはそろそろ帰る準備か、はたまた旅の途中のものか。いずれにしても長旅に備えて体力増強に努めているに違いない。
おそらくもう明日は姿は見られないだろう。
来年春にまた会えるだろうか。

当たり年

さう言へば体躯しつかり秋燕

ここのところ虹をよく見る。

ちぎれたような雨雲が盆地によく入ってくるからである。
それももっぱら盆地東半分を通りことが多く、西の端っこの人間からはよく見える理屈である。もっとも背後からの光が必要なので午後の時間である。夕立というものを長いあいだ見てないが今年はやたら多い。夕立の当たり年である。虹をよく見るというのはそんな理由からであろう。
虹に顔を上げると一羽の燕が悠然と横切っていった。体格はいつでも南へ帰れるくらい立派である。
今度は盆地に入ってきた大和川に沿って下ってゆくのだろうか。それとも南へ下って紀ノ川沿いにすすみ紀淡海峡を渡るのであろうか。長い旅路に十分に耐えられようと思われる。

塒入り

大極殿灯り秋燕寝まるべく
大極殿灯り秋燕塒入る
大極殿灯り塒の秋つばめ
秋燕大極殿に日の落ちて

平城京の葦原が燕の渡りの集結基地になっている。

今年生まれたものも、子育てを終えた親もともに南方に帰って行く前に、多いときで数万も集まってくるのだ。
日が沈み始まるとどこからか現れて、数万羽が乱舞しながら葦原に降りてゆく。野鳥の会の報告では十階建てビルの高さにまで達するというから壮観だ。これを、燕の塒入りというそうだ。大極殿がライトアップされて大平原にくっきり浮かぶ頃には燕たちは床に入っている。
ピークは八月から九月初めにかけてで、九月半ばとなればそろそろ終盤にさしかかっている。

この塒入りは大淀の葦原でも見られるそうだから、平城京を発ったものが生駒を越えて淀川に向かうものがいるのかもしれない。