伊勢路青々

穭田の伊勢路弥栄穂の垂るる

伊勢平野はどこまでも青かった。

どこもここも孫穂が垂れて、北国と違って雁の仲間が来ないわけだから、雀たちくらいではとても食べ尽くせないくらいだ。
もしかすれば、鹿とか猪とか獣たちが降りてきて、ますます里は騒がしくなるのだろうか。

クラス会

穭田の黄金まぶしき伊勢路かな

驚いた。

遠目にはてっきり休耕田の雑草かと思えたが、それがあまりに広大に続くので車を停めて確かめると、なんと見事に穂を垂れた穭田だったのである。さすが、伊勢平野は米どころ。米でなければ大豆畑。麦の刈り入れが終わったところに大豆を植えるのだろうか。いずれも、みごとな実りの、まさしく「美し国伊勢」である。

奈良盆地は刈り入れがようやく終わろうという頃。穭が伸びているところなど、その後もほとんど見られないのに対して、なんという差だろうか。昔から、伊勢詣での人がお金を落としてくれるし、広大な平野と豊富な水に恵まれて、伊勢は昔からよほど豊かだったのではなかろうか。そんなことを考えると、金持ち喧嘩せずではあるまいが、伊勢人のなんともおおらかな気質は当然のことのように思えてくる。

中学のクラス会、恩師は健在とのことだが迷惑をかけるからと欠席された。クラス、というより全校でナンバーワンのイケメンで、野球のエースだったH君が古稀の誕生日を前にして亡くなった報告があり、献杯からスタート。楽しい三時間はあっというまに過ぎた。

冬が来ると

穭田の穂には及ばじ低き丈

理屈っぽくなってしまった。
刈跡に稲孫が青々と伸びていたが、冬が近い時期だから穂をつけるまでには至らないだろう、という意味(笑)
家から100メートルもいかない山の斜面には田や畑が広がっている。傾斜のゆるい棚田には一様に稲孫が生えていた。
畑となっている部分は地主が家庭菜園用に賃貸ししているようで、各区画はとりどりの野菜で溢れていた。