玉のまま錆びて芍薬崩れざる
万緑の見渡すかぎり寺領とや
久しぶりに長谷寺吟行。
牡丹の時期の喧噪からは様変わりの静けさに包まれて、ゆっくり境内を散策することができた。
勿論、「花の御寺」といわれる長谷寺のこと、花の端境期とはいえ句材はいくらでもある。
芍薬も時季外れだが、名残の風情はそれはそれでまた詠み応えがあるというもの。
咲ききって、大きな種を見せるものが多いなか、開くことなく蕾のまま枯れてゆく姿、ある意味、冬薔薇に似通うような趣に心引かれてしばらく佇んでみて得たのが掲句である。
あの大舞台にたって「万緑」に挑戦するのも今日の目標で、いくつか詠んでみたもののひとつが寺領の句。
今日はいくつも詠むことができ、どれを投句するかと悩むほど、贅沢な一日であった。長谷寺、さまさまである。