霧霽れて

括られて一叢芒畑の隅

吟行は高取のかかし祭だった。

町おこしの一貫で、城下町の町家沿いに近代的な装いの案山子作品が並べられ、それを一つ一つ巡るのんびりした吟行だが、さすがに町家案山子を詠むというのは季題の本意には遠く、なかなか難しい吟行となった。
そこで、通りから外れた畑などに回って句材を探すことにした。
畑を囲むように秋桜が揺れ、菜畑の大根、キャベツ、白菜も順調に育っているようである。畑には、柿の実もたわわに見るからに生り年の風情を見せるかと思えば、ひときわ色を濃くした石榴も鈴なりである。
背後は、竹林だとばかり思っていたら、どうやら古墳の一角らしく鵙が巡ってくるし、鵯君も賑やかだ。
雨上がりの猫じゃらしがきらきら光り、草むらからは虫の声が盛んに聞こえてくる。
霧がかっていたのがはれて、三大山城の高取城の山がはっきりと見えてきた。
町からちょっと外れたところには秋がいっぱいあふれている。

風の楯

屋敷林背負ふ芒の籬かな

屋敷林は富山の砺波平野のものが有名だが、調べると日本海側の各地にあるようだ。

日本海側に多いのは雪を含んだ季節風を直接に受けるからだが、山形だったか、この時期になると屋敷林に加えて芒を組んで籬とする作業に追われる集落がある。
いわば家の前にも後ろにも風の楯を設えるわけだから、この地域での風がいかに手強いかが分かる。

地吹雪ツアーで地域の弱点を逆手に町興しをはかる自治体もある一方で、集落の者どうし互いに助け合ってじっと冬に耐える風土を守り続けているところもある。

ヘルメット

ヘルメット風切る音や芒原

自転車ではない。

車を出すほどではないが、荷物などあると歩いて往復するにはちょっと辛い。そんなときのために原付バイクを買った。このてのバイクのなかでも一番軽量で取り回しがしやすいし、だいいち安い、それにスピードもたいして出ないがちょこちょこ走るには最適だ。
大柄な人が乗ろうものなら「三輪車に乗ったサーカスの熊」然として格好が悪かろうが、小柄な自分では問題はないだろう。
ペーパードライバー同然の妻がメインに使う予定だが、今日は病院で証明書をもらうために、娘のキャップ型のヘルメットを借りてひとっ走り。途中の堤防で風を切って気持ちよく走ると、道路脇の芒が揺れた。

生存競争

分譲地晩生の芒の細きかな

大和盆地を見下ろす信貴山麓につくられた造成地の一画に越してきた。
近所にはまだまだ売れ残った区画が多く、なかには家庭菜園として利用されているものがあるが、多くは夏の間はいろんな雑草が伸びたままになっているようだ。
背高粟立草も進出しているが、そうした雑草のせめぎ合いのなかから芒が自分の居場所を求めて、この時期になって漸く顔をのぞかせていた。