説得力

箒目のつきしばかりを花の散る

月一回は天満の大阪天神さんの近くに行く。

今日がその日だが、用がすめば立ち寄ることにしていて、今日は桜がどうだろうかと訪ねてみた。
隣の繁昌亭は昼席中止の貼り紙。ということは夜はやっているとことだろうか。夜の外出自粛も呼びかけられるようになって、これら寄席や劇場、映画館というのは閑古鳥が鳴いているかもしれない。
ここ何十年と世界が経験したことのないパンデミックにより、すっかりグローバル化した経済は想像も付かないようなダメージを受けそうで、それがまた先行きの不安をよけいにあおる。
ここ数日のうちに感染数が上っ放れしそうないやな予感がただよう昨今である。
都知事がこれから何やら記者会見するという話だが、オリンピック延期がきまるまで沈默を保っておいて急にロックダウンやらなんやら説得力ない話をのたまうものだから、データも実情もよく知らされてない市民はますます不安になるばかりである。

見渡せば

明治橋昭和橋へと花の屑

それぞれ架けられた時代の名前だろう。

あとで完成した昭和橋が国道として交通量も多いのに対し、明治橋は100年前にあった先輩なのだが今は県道として立場が逆転している。
桜のころは、川面が盆地中の落花で覆い尽くされるが、いま両橋のあいだの河原、土手は遠目には菜の花だが、実際は西洋芥子菜が咲き誇っていて黄色一色である。
しかし、これもやがて夏となると、また別の渡来植物に席巻されて様相が一変する。
冬またすべて枯れ、春となればまた花屑、芥子菜へと繰り返される。
ダイナミックな変遷がごく身近なところで繰り返されてるのだ。

風のいたずら

桜散る山の公衆電話にかな
花吹雪山のポストの仁王立
花屑の風紋たえず変化して

今年の花吹雪は豪快である。

短期間に満開になっただけあって、散るのもタイミングを合わせたようで、いつもの三々五々ではなくて一度に散ったというところだろうか。
舗装道路にこぼれた花屑が、砂紋、風紋を描くようにして右に左に風にもてあそばれるのも、いよいよ春が深まった感を強くするのだった。
桜吹雪が、無人の電話ボックス、郵便ポストに降りかかるのを見るものとてなく、当尾の里の春はたけてゆく。

散りしいて

花屑をかしこにタイヤ回りたる
花屑の無垢悲しけれ雨上がる

雨が上がり、花が道路に散り敷いている。

車のタイヤにも、靴の裏にも、道路をゆくものには花びらがひたひたと着いてゆく。