難波の華も

造花葺く演芸場に桜散る

先日通りかかったら「昼席休止」の札がかかっていた。

この騒ぎでも夜の部はやっているのかと首をひねったのだが、やはり寄席や演芸場はすべて休止しているようである。
入り口の庇に造花の花を挿して華やかさを演出はするものの、それも今ではむなしくてお隣の宮の桜は散るを迎えているのである。

風のいたずら

桜散る山の公衆電話にかな
花吹雪山のポストの仁王立
花屑の風紋たえず変化して

今年の花吹雪は豪快である。

短期間に満開になっただけあって、散るのもタイミングを合わせたようで、いつもの三々五々ではなくて一度に散ったというところだろうか。
舗装道路にこぼれた花屑が、砂紋、風紋を描くようにして右に左に風にもてあそばれるのも、いよいよ春が深まった感を強くするのだった。
桜吹雪が、無人の電話ボックス、郵便ポストに降りかかるのを見るものとてなく、当尾の里の春はたけてゆく。

初夏の景

田の水にしきり散りゆく山桜

棚田に浮かぶ桜の景色は美しい。

三多気では、水面に映える桜を楽しんでもらおうと一部の田に水を張ってある。
二分三分咲きが多いなかで、なかには散りかけているものもあって、それが水田に浮かぶ花筏となっているものがあった。
流れゆくものではないので、正しくは花筏ではないのだが、水田に浮かぶ花片というのは珍しくてしばらく眺めた。
畦もいまどき見事に塗られて、そこをみるだけではもう初夏の絵になっている。

桜のある景色

一夜にて景色変へてみせ桜散る

朝目覚めて対岸の丘に目をやると景色が一変していた。

前日までの桜が一度に散らされたようである。
これで、大和盆地の桜も見納め。次は吉野か、高遠か。