鉄条網

鳥せせるたびに揺れたる芹の水

灌漑の水に芹が密集している。

田植えが近づくまではきっとこのままだろうが、実際に水を引いたときこの芹の群れはいったいどうなるのだろう。おおかたは刈られてしまうんだろうなと思うと気の毒だが、鉄条網が張られているので摘んで帰るわけにも行かない。
日に日に緑を濃くしてゆくようだし、あれをさっと茹でてお浸しにでもしたらきっとうまかろうに。

水生

貯水池をこぼるる溝の芹青む
柵ありて芹の水には近づけず
万葉の川の水芹摘みきれず
南麓の裾に染みだし芹の水
環濠の名残の水の芹の青
車椅子待たせ摘みをる田芹かな
芹摘女介助の人に戻りけり
入会の疎林ひと刷け芹の水
一握り芹を摘んでは街騒へ

防護柵があるので中に入れない。

貯水池の水位を超えた水があふれている。その溝に芹が茂っている。
子供は勿論、大人でも危険だから、一般人は立入禁止である。
中に入れるのは、管理者か整備など委託された業者だけであろう。
おそらく、治水のためいつまでも生やしておくわけにはいかず、遠からず誰に摘まれることなく駆除されてしまうのだろう。

あのなつかしい香りと歯ごたえをイメージして、立ち去るしかない。